事業承継税制(特例措置)の使いどころ──適用判断のフレームと長期の縛り

事業承継税制(特例措置)は、後継者が中小企業の株式を引き継ぐ際に、相続税・贈与税の納税を100%猶予・免除する制度です。要件を満たすメリットは数千万〜数億円規模に達する一方、長期の縛りもあるため、適用判断が重要です。本稿は、適用判断のフレームを整理します。

事業承継税制(特例措置)の基本

事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」があり、特例措置は2018年に創設された大幅拡充版。主な特徴:

  • 納税猶予対象株式の上限:なし(一般措置は2/3まで)
  • 納税猶予割合:100%(一般措置は80%)
  • 後継者数:最大3名まで
  • 適用期限:2027年12月末まで(特例承継計画の提出)

特例措置の適用には「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要。

適用の主な要件

事業承継税制を適用するための主な要件:

会社要件:中小企業者であること、上場会社・風俗営業会社でないこと、資産保有型会社・資産運用型会社でないこと。

先代経営者要件:贈与の場合は代表者を退任、相続の場合は被相続人が代表者だったこと。

後継者要件:相続・贈与で会社の議決権の50%超を取得し、筆頭株主になること、贈与時は20歳以上、3年以上役員等を経験。

5年間の継続要件

適用後5年間は以下の要件を維持する必要:

  • 後継者が代表者であること
  • 後継者が筆頭株主であり、株式を保有し続けること
  • 従業員数の80%以上を5年平均で維持
  • その他、特定の事業を継続すること

これらに違反すると納税猶予が取消され、猶予税額に利子税を加えて納付する必要。

適用判断フレーム

事業承継税制を適用すべきかは、以下のフレームで判断します。

1. 株式評価額の規模:節税効果は株式評価額に比例。評価額が小さい(数千万円)ケースでは、特例の手間に対する効果が限定的。

2. 後継者の確定性:5年間の継続要件を守れるか。後継者の経営継続意思、健康状態、家族関係の安定性を見極める。

3. M&A・事業再編の予定:5年以内のM&A・事業再編は取消事由になりやすい。Exit前提なら適用を避ける選択も。

4. 雇用維持の見込み:80%以上の従業員維持が可能か。事業環境の悪化リスクを考慮。

特例承継計画の作成

特例措置を活用するには、「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、認定を受ける必要があります。計画書には:

  • 後継者の氏名
  • 事業承継の予定時期
  • 承継時までの経営見通し
  • 承継後5年間の事業計画

計画の作成支援は、認定経営革新等支援機関(税理士・会計士・コンサルタント等)の関与が必要。

一般措置 vs 特例措置の選択

特例措置の適用期限は2027年12月末まで(2026年5月時点)。期限後は一般措置のみとなる。

判断軸は、(1) 株式評価額の規模(大きいほど特例措置のメリット大)、(2) 5年継続要件の確実性、(3) 承継時期の確定性。

承継時期が2027年以降になる見込みで、5年継続が確実な場合は、特例措置の適用が経済的に有利。

適用後の取消事由と対処

適用後の主な取消事由:

  • 後継者が代表者を退任
  • 後継者が株式を一部譲渡(M&Aで売却した場合等)
  • 会社が資産保有型・資産運用型に変質
  • 従業員数が80%を下回り、5年継続できない

取消の場合、猶予税額に利子税を加えて納付する必要。特例措置を活用する場合は、5年間は慎重な経営判断が求められます。

実務での活用判断

事業承継税制の適用判断は、税理士・財務顧問との十分な相談が必要です。特に以下の場面では、慎重な検討が必要:

  • 将来のM&Aの可能性が残る場合
  • 後継者の経営継続性に不確実性がある場合
  • 事業環境の変化(規制・市場・競争)で雇用維持が難しい業界

with総合研究所では、事業承継税制の適用判断を、長期の経営計画と一体で支援しています。短期の節税効果だけでなく、長期の経営の自由度を含めた総合判断が必要です。


※本記事は一般的な情報提供を目的とした解説であり、個別の税務・財務・法務に関するご相談については、専門家にご確認ください。記載内容は2026年5月時点の制度・実務に基づきます。

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