M&Aの専門家として「仲介」と「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」の2形態があります。役割・利益相反・手数料の構造が異なり、選択次第でM&Aの結果が大きく変わります。本稿は両者の違いと使い分けを整理します。
仲介とFAの基本構造
M&A仲介:売り手・買い手の両方から手数料を取る形態(両手取引)。取引の成立をマッチングする役割。中小企業M&Aで件数最多。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー):売り手または買い手の一方の代理人として、手数料はその一方からのみ受け取る(片手取引)。依頼者の利益を最大化する立場。大手企業M&AおよびPEファンド関連で主流。
利益相反の構造
仲介は両者から手数料を取るため、構造的に利益相反の問題があります。具体的には:
- 売り手の譲渡対価を最大化することと、買い手の取得価額を最小化することが矛盾する
- 仲介の利益は取引成立(マッチング)で決まるため、価格交渉に深くコミットしにくい
- 双方からの手数料を意識し、無理な値交渉を避ける傾向
FAは片手取引で、依頼者の利益最大化が目的のため、利益相反は発生しない。代わりに、相手側の代理人探しが必要。
手数料構造の違い
仲介・FAの手数料は「レーマン方式」が多い。譲渡対価のスライド方式:
- 5億円以下: 5%
- 5〜10億円: 4%
- 10〜50億円: 3%
- 50〜100億円: 2%
- 100億円超: 1%
仲介は売り手・買い手の両方からこの手数料を取るため、合計手数料は売却対価の8〜10%規模になることも。FAは片手のため、売り手側のみの手数料(5%程度)で済む。
中小企業M&Aで仲介が多い理由
中小企業M&Aで仲介の利用が多い理由:
(1) マッチング機能の必要性:中小企業の売り手・買い手のマッチングは情報の非対称性が大きい。仲介がデータベースを持ち、マッチングの効率性が高い。
(2) 規模に対する専門家コスト:中小規模のM&Aで、売り手側と買い手側それぞれにFAを起用するとコスト負担が大きい。仲介1社で完結する方が経済合理性が高い場合がある。
(3) 取引成立の確実性:両手取引のため、仲介は取引成立にコミットする(成立しないと手数料が入らない)。
FAが向くケース
FA起用が向くケース:
- 譲渡対価10億円以上の大型M&A
- 売り手の手取り最大化を最優先する場合
- 複数の買い手候補を競合させて価格を引き上げたい場合
- クロスボーダーM&A
- 業界特殊性が高く、専門知識が必要な業界
仲介が向くケース
仲介が向くケース:
- 譲渡対価5億円以下の中小企業M&A
- 後継者不在で、迅速な売却が優先される場合
- 業界内のマッチング機能が重要な場合
- 売り手・買い手双方が同等の規模感
- 取引成立のスピード重視
使い分けの判断軸
仲介・FAの選択軸:
- 譲渡対価の規模(大きいほどFA)
- 取引の複雑性(複雑ならFA)
- 売り手の交渉力(弱いならFA推奨)
- 業界特殊性(高ければFA)
- 手取り最大化への優先度(高いならFA)
- 取引スピード(速さ重視なら仲介)
with総合研究所の立場
with総合研究所は、税務+財務+M&AアドバイザリーをFA機能として一体提供することで、中堅企業のM&Aで売り手側の手取り最大化を支援しています。
仲介と異なり、(1) 売り手側のみの代理人として利益相反なし、(2) 税務戦略を含めたスキーム設計が可能、(3) DD対応のセルサイドサポートまでカバー、という強みがあります。
併用パターン
実務では、仲介とFAの併用パターンも存在します。例えば:
(1) 売り手にFAが付き、買い手探しは仲介に依頼
(2) 仲介でマッチング→具体的な交渉段階でFAを追加起用
(3) 売り手はFA、買い手は仲介で交渉
譲渡対価の規模・取引の複雑さに応じて、最適な専門家構成を組み立てるのが現実的です。
※本記事は一般的な情報提供を目的とした解説であり、個別の税務・財務・法務に関するご相談については、専門家にご確認ください。記載内容は2026年5月時点の制度・実務に基づきます。