創業計画書の質が、創業融資の審査結果を大きく左右します。「テンプレートに沿って埋める」だけでは通らないのが現実です。本稿は、通る創業計画書の構造と、各項目の書き方の実務を整理します。
創業計画書が見られているポイント
創業融資の審査担当者が創業計画書で見ているのは、(1) 事業の妥当性、(2) 経営者の能力、(3) 返済可能性、の3点です。
これらを「自信がある」で押し切るのではなく、「具体的根拠とエビデンス」で示すのが計画書の本質。「思い」より「論拠」が重視されます。
創業の動機:なぜ今・なぜ自分か
「創業の動機」は、計画書の冒頭部分。ここで審査担当者の印象が大きく形成されます。
書き方のポイント:
- 業界・業種への深い理解(なぜこの業界か)
- 事業を始める必然性(なぜ今、なぜ自分が)
- 過去のキャリアとの一貫性
- 事業を通じて何を実現したいか
「儲かりそうだから」「興味があるから」では弱い。「業界の課題に気づき、自分の経験で解決したい」など、ロジックが通る動機が望ましい。
経営者の略歴:業種経験のアピール
経営者の略歴では、業種経験の長さと深さをアピールします。同業での実務経験は、創業融資の評価で最も重視される要素のひとつ。
未経験業種で創業する場合は、(1) 関連業種の経験、(2) 補完する共同創業者・パートナーの存在、(3) 業界調査・準備期間の証拠(セミナー受講・資格取得等)、で補強します。
取扱商品・サービスの説明
取扱商品・サービスは、第三者が30秒で理解できる説明にする。難解な業界用語、自分しか理解できない説明は減点。
書き方の枠組み:
- 誰のための商品か(ターゲット顧客)
- 何を解決するか(顧客の課題)
- どう解決するか(商品・サービスの内容)
- 競合との差(自社の独自性)
取引先・取引関係:数字の積み上げ
取引先・取引関係の欄は、売上計画の根拠を示す重要部分。「見込み顧客」の具体性が問われます。
記載例(良い書き方):
- 仕入先A社:○○製品、月間100万円仕入予定、決済条件:月末締め翌月末払い
- 販売先B社:既に商談中、月間50万円受注予定、検収後30日入金
- 販売先C社:商談中、月間80万円受注予定
「複数の見込み顧客にヒアリング済み」というレベルではなく、具体的な企業名・金額・条件まで踏み込むのが理想。
必要資金と調達方法:内訳の明確性
必要資金の欄は、(1) 設備資金(店舗・機器・初期在庫)、(2) 運転資金(人件費・経費・予備資金)、の内訳を明確に。
調達方法は、(1) 自己資金、(2) 親族・友人からの借入、(3) 公庫からの融資、(4) その他、の内訳。自己資金が多いほど審査評価は高い(自己資金要件は廃止されたが、評価項目として残る)。
事業の見通し:売上・経費の月次予測
事業の見通しは、月次レベルの売上・経費・利益の予測。年単位ではなく月単位の精度が求められます。
記載のポイント:
- 売上の根拠(客数×単価×頻度の計算式)
- 変動費・固定費の内訳
- 初年度の月次推移(立ち上がりのスローぶり)
- 2年目以降の安定化
毎月同額の売上計画は不自然。立ち上がり時期の遅さ、季節要因、初期コストの集中などを織り込んだ現実的な計画にする。
返済原資の説明
返済原資は審査の核心。融資金額に応じた毎月の返済額が、事業の見通しから無理なく返済できる構造になっているかを示します。
例:1,500万円借入、返済期間7年、月返済額約18万円。これが事業の月次キャッシュフローから無理なく出せる構造かを、計画書の数字で示す。
リスクシナリオと対応策
リスクシナリオも書き加えると、計画書の信頼性が上がります。「売上が想定より低かった場合、こう対応する」という具体策を1〜2項目示す。
(1) 売上が計画の70%だった場合の対応(人件費の調整、追加の販促等)
(2) 主要顧客の喪失への備え
(3) 業界環境の変化への対応
「リスクを想定していない」よりも「リスクを想定して対応策を持っている」経営者の方が、審査評価が高い。
※本記事は一般的な情報提供を目的とした解説であり、個別の税務・財務・法務に関するご相談については、専門家にご確認ください。記載内容は2026年5月時点の制度・実務に基づきます。